夜遊び 「ガハハハハ、今日は祭だ、じゃんじゃん楽しめ!」 近藤さんが大声で笑う。それだけ世間が平和な証拠。 それに合わせて俺たちも笑って過ごす。たった一人を除いては。 「土方さん」 池に近い縁側で、一人煙草を吸う男がそれだった。 「山崎」 私着物を着て久しぶりに局院でゆったりとした時を過ごしていた。 「どうしたんですか、祭なんですし、楽しみましょうよ」 山崎が声をかけてくるが土方は黙々と煙草を吸うだけで何という反応もしない。 「そいえば、久しぶりに土方さんとは二人っきりで話できるのかな」 お互い、情報収集、市中廻りなどの仕事で顔を合わすことが少なかった。 「そうかもな」 ふっと煙を吐き出して、土方が立ち上がる。 「土方さん」 引き止めるように立ち上がって 「ちょっと夜抜けしません?」 「あー、風がいい気持ちだ」 町が星のようにきらきら輝いて見える展望台に二人はいた。 空気を吸って伸びをする。土方はベンチに腰掛けて一夜を眺める。 「そうだな」 「…何も憶えてないかなぁ」 「?」 山崎がぽつりと言う。土方が見たときには山崎は自分のほうを向いていた。 「何がだ?」 「やっぱ憶えてないっか」 山崎は悲しそうな顔で笑って俯いた。 「こんな硬い頭だからかここで何をしたかよく覚えていない、良かったら何か教えてくれ」 「…いいですよ」 くるりと後ろを向いて山崎は土方に背を向ける形で話し出した。 「俺ね、昔この展望台から落ちそうになったんですよ」 「クソ…しくじった…」 半月からまた細くなった月が夜の空を照らす。 屋根伝いに走る影、腕から滴る赤い血。 「はっ…はっ……敵が追ってくる気配はないな…」 影は山道のふもとにいた。血の出ている方の腕からは常にぱたぱたと鮮血が流れて地面に染みを作っている。 もう一度辺りを見回して、山を登り始める。 陰の近くの茂みからガサ、と音が鳴った。 息は荒い。だいぶ血も流れ出たようで、視界がぶれる。 点々と軌跡を残す血痕を誰かが忍び足で消していく。 腕を怪我した影は町が見渡せる広い所へ出た。月がうっすらと写す青い町の風景がきれいに闇に映える。 顔に巻いていた布を外す。伸びた髪が風でなびく。 こんなに風を心地いいものだと思ったのは久しぶりだった。 刹那、脚から力が抜ける。そして激痛が走る、付けてきた奴らが銃で脚を打ち抜いた。 脚に力が入らない。ふらふらと身体は前へ、そして視界から光は消える。 どうせ局長に見せる顔なんてない。いっそこのまま落ちてしまおう。 だが皮肉にもそうはいかなかった。 後ろで何かが倒れる音が聞こえて、聞こえなくなったかと思えば駆け寄る足音。 腕をつかまれて、消えかける意識の中で憶えている事があった。 「山崎!」 聞き覚えの有る低くて心地いい声。そしてまだ髪の長いままの男の顔が。 「憶えてませんか?」 「さぁな、全然」 随分前のことなんて忘れたよ。土方がまた煙草に火をつけようとした。 山崎がくわえられた煙草をとり、その手も止める。そして物寂しくなった唇に口付けた。 「ばっ…何を……」 「昨日思い出したんです」 手を離すと煙草も返した。 「俺まだ土方さんに感謝の礼もしてなかったしする暇もなかった、だから今夜の祭で色々おごらせてください!」 山崎が頭を下げる。土方は目をそらして 「いいよ、そんなたいそれた事じゃな…」 「それでもおごらせてください!」 「………」 土方が頭を抱えて大きくため息を付く。 「わかったよ、だからもう町に戻ろうぜ…」 山崎はぱっと顔を笑顔に変えて「やった」と一言言うと土方の腕を引っ張って町へと降りていった。 「山崎」 引っ張られて町に戻る道中、土方は山崎に言った。 「なんですか?」 「なんでさっき俺にキス…」 「そんなの簡単ですよ」 山崎は立ち止まって土方に振り返る。 「土方さんのことが好きだからです」 にこっとわらって山崎はまた土方の腕を引っ張る。 「あそ。」 土方も苦笑いでごまかす。 二人はゆっくり夜の町へと戻っていった。 翌日 「おあついですねェ土方さん」 「は、何の事だ?」 「やですねィ、ごまかさないでくだせェよ」 終わり。 苦し紛れの戯言。 2004/06/01 どうも、腹痛で学校休んでるくせに思いっきりパソ付けてやってました、佐藤でう。 なんと、1時間ほどで完成でした。わおー。 元ネタはピスメのアニメを某友人から借りたことからであります! 丁度真選組のなかで運動会みたいのが壬生寺で行われてて、まあその時は土方さん大阪行ってたんですけど これを元にゴリゴリガタガタワープロでネタ練って、パソコで今打ったとこでした。 しんど…!!ビックウェーブの馬鹿ー!!! 本当は沖土だったのよ…。神社の境内でさせちゃれー!話。 打つのが大変だし、軽い愛情表現の方が長くなくて良いかなーって思ったのでした。えぇ。